Blah-blah & 糸レビュー

イギリス糸を編む

先日Blacker Yarnsというイギリスのメーカーの糸を購入しました。
ところで最近イギリス糸は編み物界で注目を集めています。
イギリスは誰もが憧れるRowanという老舗高級糸メーカーや、シェットランドウールを使ったJamieson’sやJamieson & Smithなどの有名メーカーの国で、以前から伝統があり、層が厚い国という印象がありました。かつては羊毛業が盛んで、世界でも例を見ないほど数多くの品種の羊を発達させた国でもあります。

そんなイギリスではここ数年、地元で産出、製造された製品を買って、地元産業と環境の保護に貢献する、というのが趣旨のBuy Local(地産地消)ムーブメントに乗って、お国にあるリソース=羊毛を利用して、凋落した繊維産業を救うべく、数少なくなった紡績工場で作った糸、というのが多く出てきました。そして昨年からケイト・デヴィスさんやイゾルダ・ティーグさんなどの有名なデザイナーさんがオリジナル・ブランドの糸を出されたことで、一気に露出度と注目度が高まった、と言えると思います。
たとえばケイトさんの糸Buachailleはスコットランド産ウールを100%使った糸。ケイトさんはこの事業で中小・零細企業に与えられる賞Microbusiness of the yearを受賞されています。
(Brooklyn Tweed やHarrisvilleはアメリカでの同じ試み、と言えますね)。

Blacker Yarnsは、イギリス糸にこのように注目が集まる以前からイギリス産ウールを糸にしていたThe Natural Fibre Companyの女性社長、スー・ブラッカーさんのオリジナル・ブランド。こちらのブランドでもイギリスのウールから作られた糸を販売しています。Blacker YarnsについてはMOORITさんの『こんな糸で編んでみたい』が詳しいですよ^^。

Blacker Yarnsにはシェットランド、ヨートランド、ブルーフェースドレスターなどのシングルブリード(単品種)の糸や、イギリスウールのブレンド糸など、面白い糸がたくさんあるのですが、興味を惹かれたのはLyonesse DKという糸。
リネンとウールというあまり見かけないブレンドの糸で、Blacker Yarnsでは夏糸として売られています。まずはシェードカードを取り寄せまてみました。

この糸、購入には実はかなり迷いました。
イギリス製、つまりイギリスの工場で加工されたイギリス産のウールではあるのですが、フォークランドのウールなのですよ。
フォークランド諸島はイギリス領ですが、アルゼンチン沖にある島々で(フォークランド紛争が記憶にある方もいらっしゃるでしょうか?)、南米大陸の南端に近く、ヨーロッパからはとても遠くにある(マラブリゴのウルグアイよりも遠い!)。
フランスにもカリブ海のマルティニーク島やグアドループ島などの海外県というものが存在しますが、そこがヨーロッパかというと個人的にはノーと言いたい。これらの島で採れるバナナやサトウキビはフランス産ではあるけれど、ローカルではない。
フォークランドウールを使った糸はイギリス糸であるのは確かなのだけれど、ローカルとは言い難いし、ローカルではないからエコロジカルでもない(カーボンフットプリント値が高くなる)……。
とこのように、考えて悶々としていたのでした。

でも結局、誘惑に負けました~*_*;。特にシェードカードを手にしてしまった後では、抗いづらいものがあります(でもイゾルダさんのフォークランドウールをブレンドした糸はがんばって踏みとどまりました^^。以前から編みたい彼女のBlank Canvasにはピッタリかも・・・と画面の前でドキドキしながら迷ったのですが)。

そして着分購入しました(フランスの銀行が発行しているVisaカードが普通のVisaとしては使えず、いろいろ問い合わせたのですが、社長のスーさん直々に、丁寧に対応していただきました)。

ビニールの外袋を開けると、包装紙に毛糸の紐がかけてありました。
lyonesse-moonstone-packed

薄紙を開けると、とても几帳面に糸玉が並べてあって、ちょっと感心してしまいました。ラベルの向きまで揃っています(ガイコクってそういうの、あんまりない)。
lyonesse-moonstone-unwrapped

この糸でBrooklyn Tweedから出ているJoji LocatelliさんのSeacoastというパターンを編んでいます。
連休で海に行った日に写真を撮りました(あちこちボヤけててすみません~-_-;)。

ナチュラルな色で、しかもリネンが入っているので、「麻糸」を連想してしまいます。でも手触りは幸い、麻糸のようにゴリゴリはしていません。
50%ブレンドされたウールは、メリノと、メリノとリンカーン種を交配したコリデール種の毛なので、リネン100%の糸のような固さはありません。柔らかくはないんだけれど、固いわけでもなく、コットンブレンドのようなポソポソとした手触り(わかってもらえるでしょうか?)でもない。
そしてシルクほどではないけれど、ほんのり光沢がある・・・となんだか定義の難しい糸です。
たぶん50%入っているリネンがハリ、コシとツヤを与えているのかな。

DKクラスと4plyクラス2種類があって、DKは1玉50gにつき約110m、4plyは約175mです。
そして夏糸とは謡っているんだけれど、かなり温かいです。日本の夏とイギリスの夏は別物ですからね^^;。日本の温暖な地方なら、DK糸で編んだウェアは冬でもOKじゃないかと思います(最近着倒してるメリノ×コットン糸で編んだShellseekerよりも温かい気がします)。

製作中のSeacoastについてはまた今度~(かなりいじりまくり中です^^;)。

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