Larchカーディガンを編んでいます

最近さる事情がありまして、編み物がなかなか進んでおりません。 それでも、先日編み始めたくつ下の片方を昨晩(やっと)終え、残るは片方のみ・・・あ、メリヤスはぎが残っているんでした。 しかも久しぶりに2.5mmの5本針を手にしたら変に力んでしまったのか、最初は手が痛かったです。 もう一点、しばらく前から(ラベの記録を見ると1月末になっている;)Amy ChristoffersさんのLarchというカーディガンを編んでいます。 使用糸はこちら。Dropsというノルウェーのメーカーのアルパカ100%糸、Alpaca(そのまんまやん)。 7233番、Olive mix という、黄緑を基調に、赤や青が混ざっている糸。 Dropsはとてもリーズナブルないい糸を提供しているメーカーさんなのですが、こんなに安くていいのかしら?と思うくらい安いのです。 去年の年末にアルパカセールをしているときに買ったのですが、50gの1玉が3ユーロ以下=400円以下! だから飛びついてしまったのですね(全部で16玉ご購入~)。 通常価格でも3.55ユーロで、日本にも進出しているドxグxーさんのアルパカ糸のほぼ半額です。 このアルパカ糸はMade in Peru。 南米は人件費が安いのね~としみじみ思ってしまったのでした。 残念ながら、ローカルな糸ではないのですが、アルパカはフランスでは飼育されていないはず。。。 さて、Larch カーディガンはボトムアップ式に編むカーディガンで(袖つけがある・・・)、出だしがとても大変でした。 針に作る1目ゴム編みの作り目は、ゴム編みで始まるパターンを編むたびに試すのですが、いつも気に入らずにボツになります。表目の縁が広がりすぎてしまって、イマイチ納得できない出来なのです。修行が足りないだけなのですが;。 次に、指でかける裏目の作り目と普通の作り目を交互にしてみたり、ドイツ式のねじり作り目を試してみたのですが、結局は普通の指でかける作り目に落ち着きました。 その後のゴム編みがなんてことないように見えて、ねじりゴム編みなのですよ~。 裏表ともにねじるので、しんどかったです。 その後は果てしないメリヤス砂漠。 メリヤス編みは好きなので苦になりませんでしたけれどね。 で、実は身頃が編み終わって、今は袖に入っています。 家の近くの八重桜が咲いてしまうような陽気だったフランスですが、また寒くなってしまいました。 急いでしあげればまだ着られるかな。くつ下も・・・。 近々さる事情を明らかに出来るようがんばりまっす。

初くつした

お恥ずかしい話ですが、実は今までくつ下を編んだことがありませんでした*_*。 手編みびととして、くつ下は避けて通れない道だと前々から思っていて、本だけは持っていたのです。 というよりは、気になって買った本(↓)にくつ下のパターンが載っていたといったほうが正しいかもしれません(バッチリくつ下編みの本だったりするんですが;)。 【送料無料】手編みのソックス [ 嶋田俊之 ]価格:1,470円(税5%込、送料込) 【送料無料】ニットであったか冬じたく [ 林ことみ ]価格:1,470円(税5%込、送料込) くつ下編みが大好き!という方もいらっしゃいますが、私の場合はなんとなーく微妙な距離を保っていました。 でも、いつかはチャンレジしなければ……と思っていたのと(一応ニットパターン屋の店長なんかしてるし^^;)、買ったはいいけれど、使い道に困っていたソックヤーンをなんとかしたくって、おそるおそるくつ下編みに手を出すことに。 問題の糸はこちら。 個人的に、ソックヤーンはショールを作るためのものという思い込みがありまして、この糸もスティーヴン・ウェストさんのポゴーナを作ろうと思って購入しました(ポゴーナは結局Madelinetoshで作りました^^)。 でも届いてみたら予想よりも色が濃く、ショールにしたらオバサンっぽいかも?(アラフォーはこの点に敏感なのです!)と思い、クローゼットに眠っていたのです。 糸はDream in Color の Smooshy。色名は中華街のリンゴ(Chinatown Apple)。むっちりしたメリノ100%の糸で、眠らせておくには惜しい。 カラーチェンジは地味目ですが、一応段染め糸なのでシンプルな編み目の方が色が活きるだろうということで、手持ちの本のパターンはパスして、ラベリーでシンプルなフリーパターンを検索しました。 ゴム編みのパターンに決定し、編んでみたところ、悪くないじゃな~い、という出来に。 パターンは、Basic Ribbed Socksというパターンから出発したのですが、A Nice Ribbed SocksというBasicに酷似したパターンと、上の手持ちの林ことみさんの本の基本のくつ下のかかとの編み目がなぜか同じで、じゃあこっちに、という長いものには巻かれろ式にA Niceがベースになりつつあります。 かかとを編み終わったところなのですが、立体的な形が出来ていくのが楽しいですね。 くつ下編みが好きな方の気持ちがちょっとわかった気がします^^。

Pinneguriさんとのコラボ決定!

皆さんこんにちは! 今日は嬉しいニュースです。 先日お客様よりリクエストをいただいた編込み羊カーディガン、Children’s Cardigan Where the Wild Sheep Roam のデザイナーさん、Pinneguriさんとのコラボが決定しました~(パチパチ)! まずはリクエストをいただいたベビーカーディガンからリリースしたいと思いますが、他にも楽しいパターンがいっぱいで、目移りしてしまいそう! 北欧の方なので、スティークや編みこみが多く、どれも編み応えのありそうな作品ばかりです。 ラベリーのアカウントをお持ちの方はこちらから彼女の作品をご覧いただけますよ。 ↓ ↓ ↓ http://www.ravelry.com/designers/pinneguri 皆様楽しみにしていてくださいね!

ローカルな糸

MOORITさんの本のレビューというにはお恥ずかしい個人的読書感想文で、できるだけローカルでエコロジカルな糸を使いたい、と書きましたが、先日私にとってはローカルなフランス産の糸を購入しました。 それがこちら。 娘にこんなに毛糸買ったの~!と言われました;。確かによく数えたら14玉もあります;。 (おっと、ラベルの向きが揃ってないぜ) Tricotinでレビューしたこともある、Bergère de France(ベルジェール・ドゥ・フランス)というフランスの大手メーカーさんが2012年の秋に出した糸で、Pur Mérinos Français(ピュール・メリノ・フランセ)と言います。 フランスで育ったメリノ羊のウールをフランスで加工紡績した糸です。 ピュア、というだけあって、もちろんメリノ100%。 残念ながらオーガニックウールではないのですが、生産地と消費者が近い地産地消型の商品。CO2排出量の少ないエコロジカルな糸と言えます。 Lucky (me)のデザイナーのソレンさんが販売している糸も同じ仏産メリノ100%の糸ではあるのですが、作りたいものとゲージがちょっと合わなかったので残念ながら見送りました。 早速スワッチ等々を編んでみました。 色は左からSouris、Tourterelle、Blush。 発売当時は落ち着いた秋色が多かったのですが、今シーズンはカラーバリエも増えて、Blushのようなかわいいシェルピンクも登場しています。 50g玉につき120mある並太糸で、ラベリーではWorstedに分類されているけれど、DKに近いと思います。 細い糸を複数本撚ったクラシカルな構造の糸で、2目かのこ編みもなかなかな仕上がりなので、縄編み模様がきれいに出そうですね。 メリノとは言っても、マラブリゴのようなやわらかい手触りはなく、ドライな感じ。でもチクチクはしません。ソレンさんの糸と手触りが似ているので、きっとフランスのメリノウールがそういう性質なんでしょうね。 と、かなりいいことづくめの糸なのですが、この糸、ちょっぴり値が張ります。 私はバーゲン中に20%OFFで買ったのですが、通常価格は6.95ユーロ。 50g玉で1000円近いので、Bergère de Franceという、編み物をするフツーのおばあちゃんが買うメーカーさんの毛糸にしてはかなり高いです。近所のLangやFonty、Plassard、Katiaなどの高級毛糸を売る手芸店でも、もう置かないことにしましたと言っていました。他のメーカーの、おそらくはオーストラリアや南米産のメリノを使った糸と比べると高いので、売れないのだそうです。 ヨーロッパ産のウールをヨーロッパで紡績した糸は、やっぱり人件費が高くつくんだな~と、最近気がつきました。 いつもお買い物をするネットショップでIsagerさんの毛糸のラインナップをみていたら、デンマーク産ウールを使ったTvinniは100gのかせが17.90ユーロ。それに対して、ペルー産のHighlandは50g玉5.65ユーロ。 ヨーロッパでローカルなものを消費するというのはそれくらいの心構えがいるのだということなのですね。 (これってオチなんだろうか)。 いつもありがとうございます^^。

MOORITさんの本を読んでいます

先月は実は誕生月でして、堂々アラフォーに突入したわけですが、 (3才年下の友人に3X才になってね、と言ったら、それは痛いねーと返されてしまいましたT_T) ダンナさんに日本語の本をプレゼントしてもらいました。・。 ユーロが高いおかげで、かなり安くあがりました^^;。 編み物本も一緒に注文して、特に楽しみにしていたのが東京丸の内にあるMOORITさんの本。 去年一時帰国したときにのぞかせていただいたんですが、二昔前に学生だったときに東京駅で電車を乗り換えていたので、東京中央郵便局が!と感慨深いものがありました。 オバサンの昔話になってしまって申し訳ありませんね;。 肝心のMOORITさんは毛糸や編み物道具が所狭しと、でもスッキリと並べてあってとてもステキなお店でしたよ。そういうのって、センスの問題ですよね。 折りしも6月だったので、地元の手芸品店にも売っていたフランスDMCのコットンヤーンが入り口脇にディスプレーされていて、一人でおおっ、ここにも!と感動していたり……。怪しい客ですね。 さて、MOORITさんの本は毛糸屋さんの出した本だけあって、糸へのこだわりと愛着がひしひしと伝わってきます。 第一章では、手染め糸や、アルパカ、カシミア、リネンの糸など、MOORITさんがこだわりを持ってセレクトした糸が紹介されています。最近個人的に、ウールや羊の種類についてもっと知りたいと思っていたので、一品種のウールだけを使ったシングル・ブリードの糸や、稀少な種類の羊(レア・ブリード)の糸の話が、タイムリーでとても勉強になりました。 ウールのチクチクが苦手で、メリノ、アルパカ一辺倒な私ですが、首回り以外のものはシングルブリードなどの糸も使って使ってみたいなと思いました。まずは入手しやすいシェットランドウールから(もう入手してあるのです^^)。 また、毛糸をセレクトするときの、動物の生育環境や、地球環境、働く人への配慮を重視するという姿勢にも、とても共感しました。できる限り、エコでローカルな糸を使いたいと思っているので(でもこれは、羊の少ない日本ではとても難しいですね)。 巻末にはそれぞれの糸のよさを生かしたパターンも掲載されています。私はマノス・デル・ウルグアイのアレグリアを使ったタイツと、シェットランドウールの手袋が気に入りました。 第2章の糸とのつきあい方では、作品を作るときの糸選びの参考になる情報が満載されています。 特に海外の糸を選ぶときの太さの対照表は便利ですね(うちでは表にはしてませんが、区切り方は同じ^^。よかった)。 パターンの使用糸(うちではあえてこの用語を使っています。指定糸ではないのですよ!ということで)とは違う糸を選ぶときのポイントなども、とても参考になると思います。 個人的に気に入ったのはWPIツール! WPIはWraps per inchの略で1インチに何度糸を巻きつけられるかという基準。 中細だとか、fingeringなどという、メーカーがつける名称では測りきれない糸の実際の太さを測る単位で、それがツールになっているのですよ。 早速手持ちの糸をいろいろ測ってみようと思います。   編み直しの話も印象に残りました。 古くなったりサイズが合わなくなったりした作品をほどいて(ほどかれている作品がもったいない!、私が着たい!)、編み直しましょう、というススメなのですが、以前Miss Marple のテストニットをkomadoriさんにお願いした際に、お母様に子どものとき編んでいただいて好きだったセーターをほどいて、お嬢さん用にMiss Marpleを編みました(右写真)、という話を思い出しました。 ステキなリサイクルですね。 というわけで、毛糸好きにはたまらない本ですよ! 【送料無料】こんな糸で編んでみたい [ MOORIT ]価格:1,680円(税5%込、送料込) 応援ありがとうございます^^。

Vitamin B(lue)完成

12月に作り始めて、クリスマスに間に合わなかったとご報告したVitamin Dですが、 手の遅い私でも完成してました^^。 【作品メモ】 パターン/Pattern: Vitamin D by Heidi Kirrmaier(日本語版はこちら^^) 糸/Yarn: Cascade Yarns, Heritage Silk: 5637 針/Needles: 3.75mm(JP5-6号) & 3.25mm(JP4号) Ravelryページ: Vitamin B(lue) 全体像。 色はどれも実際よりも明るく出てしまっているんですが、実際の色はこちらが一番近いです。 青系は写真に撮るのが本当に難しい。 ポツポツ模様はこんな感じ。 引き返し編みはドイツ式を使いました。慣れると楽でいいですね。 着てみました。   Cascade YarnsのHeritage Silkというメリノ75%、シルク25%の糸を使ったんですが、 シルクは結構伸びますね。 編んでいるときはラグランがSではちょっと小さそうだったので(運送屋肩なので;)M1まで大きくしたんですが、水通しが終わったら身頃がかなり大きくなってしまいました。 脇の作り目を減らしてSに近づくようにしたんですけれどね。 中にボリューム感のあるトップスを着てごまかすことにします^^。 以前に作った1枚目はメリノ100%だったんですが、冬オンリーと言う感じ(しかも洗濯でヘマをして縮絨し、着れなくなってしまった)、2枚目は夏糸で半袖だったので夏オンリー版ですが、 今回はシルクが入っているのでサラっとした感じで、夏でも冬でも着れるバージョンになりました^^。 パターン指定の糸より細い中細糸(28~32目)で作ったのでドレープもきれいに出たし。 まだまだ続くバーゲンでトップスをゲットするぞー!

Blue Relax 着画

前回、前々回のポストは堅い話題でしたが、今回からはフツーに戻って、私的な編み物の記録です。 余り糸が足りなくなって迷走していたキッズRelaxですが、 「イヤ~!」と言われた濃い水色はやっぱりそのままにしてゴリ押し、着画を撮りました。 【作品メモ】 パターン/Pattern: Relax by Ririkoさん 糸/Yarn: Madelinetosh, TOSH Merino Light : Mica & Well Water 針/Needles:3.75mm(JP5-6号の間) サイズ/Size:6才くらい/6 years? on Ravelry:Blue Relax なんだかいろんなポーズをとってくれました。 走っている? カメラに向かってピース、というのをし慣れていないのでちょっとしくじってますが^^;。 糸が足りなくなるかもしれないという前提でのスタートだったので、やっぱりちょっぴり小さめだったかなあというのが残念。(母は来年も着て欲しいのよぅ!) 結局は袖の濃い水色は気にならないみたいで、今日も学校に着て行っています。 やれやれ。子どもの言うことに振り回されてはいけません・・・;。 大人のパターンを子ども向けにアレンジしたわけですが、シンプルなパターンなのでアレンジは難しくなかったです。 ドルマンスリーブから目を拾って袖を編むので、袖ぐりとかの計算もしなくてよいですし^^。 肩のラインが強いて言えば一番難しかったかな。引き返し編みは大人のSサイズよりも目数を1、2目減らしました。 このパターンの一番好きなところは、こう言うとなんだか怪しい人みたいですが、肩のとじ線。 (もちろん全体のデザインも好きなんですよ^^)。 この処理の仕方がとてもオリジナルだなあと思います。 Ririkoさん、ステキなパターンをありがとうございました☆ 自分にはファイトがあったら作りたいと思います^^。

編み図の著作権等について(見解)~2

皆さん、こんにちは。 編み図の著作権については皆さんやはり並々ならぬ関心がおありのようで、ブログ村から多くのアクセスをいただきました。またTwitterでご感想をお寄せいただいた方々、ファボっていただいた皆さまも、ありがとうございました。 さて、前回の投稿では、編み物本は編集著作物として著作権保護の対象となること、ただし著作権保護の内容は複製の禁止に限られることを述べました。複製の禁止は結構ガチガチなものであることも……。 では「編み図を編んだ作品を販売する」という問題はどうでしょうか? 書籍となっている編み方の表現には著作権が発生しうるとしても-本のレイアウトは「アイデア」なので著作権の対象とはならないそうです。アイデアと表現の線引きはとても難しいようです-、判決にもあるように「編み方自体」には著作権がありません。また、作家さんが発表された編み方に従って編んだ皆さんの作品には作家さんの「著作権」は及びません。 しかし、デザイナーの方が考案したアイデア、デザインおよび編み方は無制限に利用してよいでしょうか。 知的財産法はそれが工業所有権であれ著作権であれ、文化、経済の発展に寄与する創造的な人間活動に対し、インセンティブ(経済的見返り)を与えるのが目的です。しかし、編み物を始め、手芸分野の個人作家の作品の(作り方の)保護については現在の日本の知財法では空隙がある。法律による保護が欲しければ「実用新案登録しないほうが悪い」という考えもありますが、個人作家が自分の作品の作り方を登録するかというと、実際問題としてほぼ不可能でしょう。手続きには多額の費用がかかります(http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/ryoukin/hyou.htm)ので、作品全部を登録するのは夢物語です。 手前味噌になって申し訳ありませんが、当店で販売している海外パターンには利用許諾条件が明記されています。皆さんもご存知の「私的使用の範囲内でご利用下さい」という一文ですね。デザイナーさんによっては、さらに一歩踏み込んで「パターンを編んだ作品の営利目的での利用を禁じます」と明文化しています。また、この利用許諾条件は当店では利用規約にも定めてありますが、「お客様がパターンをお買い上げいただく際には利用規約に同意したもの」とみなさせていただくことになっており、これは言わばお客様との契約条件でもあります(http://atelierbis.xsrv.jp/guide/)。法律で編み方が保護されていないので、このような許諾条件が定めてあるのだと思います。 思うに、編み図の「編み方」が著作権で保護されているように感じるのは、コピーライト表記とこの利用許諾条件が言葉は悪いですが、常に「一緒くた」に書かれているからだと思うのです。本来は「複製権」と「利用許諾条件」と言う全く異なるものであるのに。 さて、百歩譲って(笑)日本の編み「図」一点一点に著作権が発生しないとしても、皆さんがお買い上げになる書籍にも、このような文面はありますね。 今手元にある嶋田俊之先生の『手編みのてぶくろ』(文化出版局、2011年)の後付けには次のように記されています。「本書で紹介した作品の全部または一部を商品化、複製頒布、およびコンクールなどの応募作品として出品することは禁じられています」 「毛糸だま」(Vol.148、日本ヴォーグ社、2010年)にも、「本誌に掲載の作品を複製して販売(店頭、ネットオークション等)することは禁止されています。手づくりを楽しむためにのみご利用下さい」とあります。 これらはすべて利用許諾条件と解釈することが出来ると思います。 編み物本、広くはハンドメイド本という、デザインと作り方という他人のアイデアが記載された特殊な書籍を購入されるときには、皆さんはこの利用条件に同意した、そのようなライセンス契約を結んだ上で購入されているのだと考えることが出来ると思います。ライセンス契約はソフトウェアの使用などでもありますね。ソフトウェアは通常購入後に「使用許諾条件」が提示され、同意しない場合は利用できませんが、編み物本の場合は営利利用禁止条件は本屋で書籍を手に取ればわかるし、手芸をされる方ならこれが慣習的に記載されているのはご存知のはずです。 先ほどのレシピ本に話を戻すと、レシピの本にコピーライト表示があっても営利利用が禁止と記されていないのは、おそらくレシピを見て料理を作るような人間に料理を業として営むことが出来ないからでしょう(笑)。ただし、ハンドメイドはうまい人が作ったものは売れる可能性があるので、ことを難しくしています。 編み図は第1回の冒頭に述べたとおり、「デザイン」と「編み方」、およびその「表現」の微妙なグレーゾーンに位置しています。 でもこのように考えてみてください。 作家さんが発表される編み図が存在しなかったらどうでしょうか。michiyoさんや三國真理子さん、またはスティーヴン・ウェストさんがいなかったら皆さんの編み物ライフはつまらないものになると思いませんか?デザイナーの方のアイデアを拝借させていただいていると考えたら、彼らが(または日本の書籍の場合は編集者が代理として)「禁止」と言っている利用法に背いて利用することは出来ないと思います。このような条件を守るかどうかは、やはりモラルの問題になってくるでしょう。泥棒はダメと法律で定められていてもやってしまう人がいるように。たとえは悪いですけれど(あえて)。 ハンドメイド品でお金を稼ぎたいのであれば、やはり自分でデザインも作り方も考えた作品を売るのが、何人にも非難されない最良の方法です。デザインや作り方を考えるのは楽しい作業です。でも、良いものを「創る」のは時間も労力もかかります。皆さんも作ったものを売って収入源としたいのであれば、一度ご自分でデザインをして、作品の裏にある苦労も知っていただきたいと思います。 最後に、ここまでで終わりにしようと思っていたのですが、新たな、かつ重大と思われる知見を得たので、皆さんと共有しておきたいと思います。 編み図の営利利用禁止は前段の利用許諾条件の受諾という契約の観点から説明できるかと思ったのですが、著作権や不正競争防止法などの知的財産関連法での保護が出来ないものの侵害は、民法709条に定める「不法行為」に基づく救済が可能なようです。709条は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」というもので、知財法などの法律で認められている権利だけでなく、「権利として認められていないもの、例えば老舗ののれんなど、他人の利益を侵害した場合にも不法行為は成立する」のだそうです(『図解による法律用語辞典』自由国民社、2004年)。つまり、「フリーライド(ただ乗り)」に当たる行為ですね。 例えば、ある企業が別の企業が発売しているデータベースの内容をコピーし、データベースとして販売したところ、データベース自体には著作物性が認められなかったものの、その行為は「公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害する」として損害賠償が認められました(東京地方裁判所平成14年3月28日判例時報1793号)。また、著作物性の認められていない新聞の見出しを某プロバイダがホームページのニュース見出しとして無断で営利目的で使用したところ、この行為は「社会的に許容された限度を超えたもの」であるとされ、新聞社見出しは「相応の苦労・工夫により作成されたもの」であって「見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情」があり、「法的保護に値する利益となり得るものというべきである」という判決が出ています(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/0C642A4A124DC13D492570970018104B.pdf)。 これは編み図にそのまま当てはまりそうですね。編み図一点一点は著作物としての保護を受けられないとしても、デザイナーさんたちの「相応の苦労・工夫により作成されたもの」であり、出版されていること自体に経済的価値を有することが認められますし、「法的保護に値する利益となり得る」でしょう。編み図の営利利用は「財産上の損害」にあたり、名を騙れば「精神的損害」を与える可能性があります。 そのようなわけで、誰もが「なんとなくダメじゃないか」と思っていたことは、不法行為となる可能性がありそうです。ハンドメイド作品の販売サイトの利用規約だったら「他人の権利を侵害する又はその恐れのある作品」に当たるでしょう(tetoteより)。 無断の営利利用が発覚してデザイナーさんに実際に訴えられるかはわかりませんが、このような法的報復措置もあり得るのです。またハンドメイドのマーケットサイトに通告されれば除名となるでしょう。 なんだか怖い話になってしまいましたが、人倫にもとる行為は法的処罰の対象となるというのは救いととるべきなのか、はたまたそのような人間の性を悲しむべきなのか、フクザツな思いとともにここで筆(?)を置かせていただきます。 最後までおつき合いいただきありがとうございました。 次回はもっと軽い話題にします^^。 その他参考サイト ネット記事見出し事件 Copyright for knitters 文化庁 著作権関連判決紹介 機械の設計図の著作権について(技術的思想)

編み図の著作権等について(見解)~1

皆さん、こんにちは。 今回は至極真面目な話です。 編み図に著作権はあるか?編み図を編んだ作品を販売してよいか?という疑問は度々ブログ界をにぎわしてきました。これは海外でも同じようで、「knitting pattern copyright」と検索すると、結構な数の記事がヒットします。さまざまな立場の人がさまざまな意見を呈しているのは日本と同じです。 先日お客様から当店の「ニットパターンは文章、編み図、写真等、その構成物すべてが著作権によって保護されています。パターンのご利用は私的かつ非営利目的での利用に限るものとします。」という利用規約の根拠を教えて下さい、というお問い合わせをいただきました。編み図を編んだ作品が販売されているのを見るとダメじゃないかと思うのだけれど、販売している人に対して、「こうこうこうだから禁止」ではないのか?と言えるような拠りどころが知りたいとおっしゃるのです。 私は法律の専門家ではありませんし、著作権の問題はとても複雑なので、白黒はっきりした答えを提示することは出来ません。以下はお問い合わせをいただいて、自分なりに調べ、このような解釈が可能なのではないかという「見解」を述べたものです。個人的にはパターンショップのオーナーとして、翻訳者として、デザイナーの方々の権利と自分の翻訳物の権利を尊重していただきたい立場にあることをあらかじめご承知おきいただきたいと思います。また、久々にまとまったことを書いたので、(何度も読み返し、書き直しましたが)混乱もあるかと思いますが、ご容赦願います。 一時に全文をアップしようかと思ったのですが、長くなってしまったので2回に分けて掲載します(前置きも長くなったことですし^^;)。 まずは編み図の定義から。太字はキーワードです。 編み図またはニットパターンとは、ニット作家(デザイナー)さんがデザインしたセーターなりマフラーなりの服飾品の作り方を示した、文章や図でなどで構成される出版物ですね。文章や図の比率は日本と海外のものではずいぶん違い、編み方の説明には写真や、記号図などが付随していることもあります。 手編みのセーターができあがるには、まずデザインありき。デザインには創造性が必要であり、著作権の保護対象となると考えがちですが、セーター等の服飾品は量産が可能で、着ることを最終目的として作られるため「実用品」として位置づけられています。そして、実用品の「デザイン」は日本の知的財産法では意匠法で保護されることとなっています。しかし、アパレル業界では流行があり、商品サイクルが短く、商品単価も安いため、商品1点1点につき、時間とお金のかかる意匠登録をすることは実際にはほとんどありません(これが単価が桁違いの車などだと話は別なのでしょう)。 ただし、フランスでは服飾デザインも「服装および装飾の季節産業の創作物」として著作権法で保護され、”パクる“と著作権侵害で訴えられる可能性があります(http://www.cric.or.jp/db/world/france/france_c1.html#110)。これはフランスの重要な産業分野であるファッション業界を保護するのが目的なのでしょう。著作権の保護範囲というのは国によって違いがあり、何をどの程度保護するかは国の政治、経済戦略に関わる問題でもあります。例えばアメリカでは音楽、映画業界が手厚く保護されています。 さて、話が前後しましたが、著作権とはなんでしょうか。 日本の著作権法では、著作物は「思想または感情を創作的に表現したもの」と定義されています。文学、美術品や音楽など、それ自体で鑑賞の価値を有するものが著作物です。一昨年、あるニット作家さんが編み図を無断で営利利用した企業を著作権侵害として訴えたところ、編み図には著作権がないという判決が出ていますが、判決の事由の一つはデザインと編み方は「アイデア(≒思想)」であり、著作物に該当しないためとなっています。アイデアを保護したい場合は「実用新案登録」をしなければなりません(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120117132801.pdf)。 他にも手づくりの分野で「編み図」に相当するものについて調べてみました。 例えば、料理のレシピ。 料理のレシピの著作権については次のリンクに女性弁護士による解説がありますが、料理の作り方としてのレシピは「アイデア(思想)」であり、アイデアは著作権の保護対象とはならないとあります(料理の作り方も、保護したい場合は「実用新案登録」をしなければなりません)。しかし、料理の作り方の説明としてのレシピは、写真を入れたりするなど、解説の表現に独自性があれば著作物性があるとみなされ、著作権で保護されるとあります。(http://r25.yahoo.co.jp/fushigi/wxr_detail/?id=20130906-00032042-r25) 先ほどのニット作家さんは、ご自分の編み図は「図面の著作物」に該当すると法廷で主張されました。図面の著作物とは、日本の著作権法では、それ自体が芸術的価値のある(すなわち著作権保護の対象となる)建築物の設計図等を想定しています。 判決では問題の編み図は、「編み図における一般的な表示方法又は表示ルールに従い、他の編み図でも一般的に採用されている構成によって、原告編み物の作成方法を説明したものであると認められ、図面としての見やすさや、説明のわかりやすさに関し、特段の創意工夫を加えたものということはできず、図面の著作物としての創作性を認めることはできない」となっています。日本の編み図はいわば規格化されており、一定のルールに従い、その名のとおり図形式で描くことになっていますので、そこに表現性は認められにくいのかもしれません。 これに対し、先ほども述べたように、外国の法律では著作物と認められるものの範囲が異なる場合があります。 再びフランス著作権法を引き合いに出しますが(私の居住国の法律であり、当店の準拠法でもありますので)、フランスの知的財産法では著作物は「精神活動の産物(œuvre de l’esprit)」であり、「その種類、表現形式、価値又は目的のいかんを問わず、著作者の権利を保護する」ことになっています(http://www.cric.or.jp/db/world/france/france_c1.html#110)。 また、アメリカの編み物雑誌Vogue Knittingのアーカイブでは、ニットパターンの著作権に関する記事が2点(http://www.vogueknitting.com/magazine/article_archive/ask_a_lawyer_knitting_and_copyright.aspx・http://www.vogueknitting.com/magazine/article_archive/a_matter_of_principle.aspx)公開されていますが、いずれも知財法専門の弁護士が回答しており、「(印刷物としての)ニットパターン自体は著作権で保護される」という点については論を俟たないようです。アメリカ著作権法では、ニットパターンは「言語著作物(言葉、数字またはその他言語的もしくは数学的な記号もしくは符号により表現された著作物)」として自動的に保護対象になるのでしょう(http://www.cric.or.jp/db/world/america/america_c1a.html)。 アトリエ・ニッツで販売しているパターンの原作の著作物性の根拠はここにあり、パターンの日本語訳は「著作物」の二次的著作物であるため、著作物となる、と考えています。当店のパターンの著作権については、これがお客様への回答となります。しかし、話をもっと広く、日本の編み図に戻しましょう。 判例では編み図には著作物性が否定されましたが、日本の著作権法でも、編み図が掲載された書籍は保護対象となります。 編み図一つ一つには著作物性がないとしても、書籍は表現性があれば「編集著作物」として著作権の保護を受けるのです。例えばデータベースは、内容自体はデータであり、著作物性がありませんが、その編集の方法に表現性が認められれば、保護の対象となります。この場合、「部品」を「組み合わせた人」、つまり編集者が「全体」について著作権を持つようです(岡田薫『著作権の考え方』岩波新書869、2003年)。 ただし、書籍の著作権法による保護の範囲は、英語では“コピーライト”というように、複製の禁止に限定されます。 皆さんが持っている編み物本にも複写(コピー=複製)についてのクレジットがありますね。 書籍のコピーが著作権侵害になるのは、本を購入すると、本というモノは自分の所有物になりますが、書かれている内容は自分のものにはならないからです。小説をコピーしてはいけないというのが例として一番わかりやすいでしょう。小説家は「出版権」という複製権を出版社に許諾し、出版社は小説という無形の著作物を書籍という有形の媒体に固定することで皆さんの読書に供しています。この複製権は独占的なものなので(著作権法第80条3項)、出版社以外の人間には複製は許されていません。 コピーの話ついでに言うと、誰にも身に覚えのあることだと思いますが、お友達に自分の持っている本の編み図をコピーしてあげるのも著作権侵害となるのです(スキャンなどのデジタル化やメール送信も「複製」に該当します)。著作権侵害をしたくなかったら、日本複製権センター(http://www.jrrc.or.jp/contract/personal.html)等の著作権管理団体を通して複写の利用許諾を取り、使用料を支払わなければなりません。図書館で編み物の本をコピーするのも、著作権侵害です。図書館での複写は研究目的に限定して許可されているからです(編み図の歴史的変遷について、あるいは編み物をめぐるディスクールについて研究する・・・などという場合はOKです)。当店の利用規約でもコピーに関してはさまざまな規定をしています(http://atelierbis.xsrv.jp/guide/)。 では、もう一つの大問題、「編み図にしたがって編んだものを販売する」はどうでしょうか。次回はここから話を始めたいと思います。 応援よろしくお願いします。

ロピセット着画?

このところ完成品の写真を撮れずにいました。 時間がなかっただけでなく、2週間毎日雨で部屋が暗くてまともな写真が取れなかったのです。 先日やっと、ずーっと前に完成していたロピセットをお人形のヘンリエッタちゃんに着てもらいましたのでアップします。 まずはワンピース。 某瑞国廉価家具店の子ども椅子に座ってもらっています。 ワンピのスカート部分。ひらひらですよ~。 小物つき。 寒そうなのでセーターを着せてみました。 カーディガンは撮影時に見当たらなかったので割愛します^^;。 (娘の部屋のどこかに埋もれているはず) おまけ。かぎ編みの練習をしました。 お姫様期の娘はいたく喜んでいました。 テオドラをお買い上げになって、お洋服はまだの方、こちらからどうぞ^^:ロピセット[HM006] これから別の作品の着画も少しずつアップしていく予定でいます。 でもその前に、著作権についていただいたお問い合わせにお答えしたいと思います。 いつもありがとうございます^^ 【アラフォスロピーの細番手】【再入荷!!】 内藤商事毛糸 レットロピー価格:604円(税込、送料別) 【アラフォスロピーの細番手】【再入荷!!】 内藤商事毛糸 レットロピー価格:604円(税込、送料別) 【アラフォスロピーの細番手】【再入荷!!】 内藤商事毛糸 レットロピー価格:604円(税込、送料別)

2014年の個人的抱負。

2014年。 明けてずいぶん経ちますが、ニッターとしての個人的抱負は戒めから始まります。 ・いたずらに作りたいものを増やさない ・みだりに在庫糸を増やさない つわものの方に比べると在庫数は少ないと思いますが、それでもRavelryのStashページを見ると、使ってない糸がいっぱいあるのですよ~(正直に登録しなければいい?)。 あの作品を作りたい!と思って糸を買うのですが、作りたいと思うスピードに手がついていかず、宙ぶらりんになっている毛糸がたまさかあるのです。 例えばこんな。 Malabrigo Sock: eggplant & Madelinetosh Sock: Silver Fox Different Linesにしようと思っています。 スティーヴンさんの暖色系の色づかいに憧れて、こんなものも買いましたね。 Malabrigo Sock: Terra Cotta Malabrigo Sock: Tiziano Red Daybreakにするか、他の色と合わせてColor Cravingにするか・・・。 他にも安かったので買い込んでしまったMalabrigo Laceとか。。。 Emerald Damask Rose Paris Night Polar Morn Tortuga まさに「罪個」な数々。。。 そして、年始にそんな決意をしたばかりなのに、年末に注文したDropsのアルパカ糸がごそっと届いたのでした。 (だって安かったんだもん~) もう一つの抱負は、アイデアを形にすること。 とろくて鈍い人間なので時間はかかりますが、少しずつでも形に出来たらなと思っています。 そのために買い込んだ糸もあるんですよね~;。 今年もおつき合いいただければ幸いです^^。

間に合わなかったVitamin D

以前Tricotinでお披露目したCascade YarnsのHeritage Silkですが、12月に入ってやっとキャストオンしました。 クリスマスまでにVitamin Dを作って、黒のワンピースの上に羽織りたいと思い、ぎりぎり間に合うかというくらいに始めました。 ですが時は師走。 そんな言葉を無視(シカト)しようと思っても年の暮れが近づくにつれて慌しく時が過ぎてしまい、12月27日現在結局まだ編み途中です。 それに、実は来月が誕生日なのですが、これまではミドルサーティーという言葉を勝手にこしらえてそれにしがみついていられなくもなかったのですが、来月からは誰がなんと言おうとアラフォーです。 そんなオバハンが膝上のワンピースなんて着ててよいのかと思うと、なんとなくペースダウンしてしまったのでした。 とは言えそろそろ縁編みに突入。 今回は袖も終わっています!(でも丈を伸ばすかも~。優柔不断は年をとっても治らず・・・^^;) 年越しプロジェクトになるか?? 今年も最後までおつき合いいただきまして、ありがとうございました。 皆さまどうぞ良いお年をお迎え下さい。